生保会社に貯蓄性保険の契約申し込み殺到

標準利率の改定で貯蓄性保険に駆け込み需要発生

「貯蓄性保険の2月の申込件数は、過去最高を記録しています」―。

ある中堅生命保険会社の担当部長は標準利率の改定前に発生した「駆け込み需要」の実態をこのように話す。

4月から生命保険会社は軒並み保険商品の値上げを予定している。理由は、金融庁が定めた「標準利率」が4月から下げられて、主に貯蓄性の保険に関して、各社が「予定利率」の改定を予定しているからだ。標準利率と予定利率と2つあるのは紛らわしいが、要は運用利回りを計算する際の前提として金融庁が定めるのが「標準利率」であり、それをもとに、生保各社が個社ごとに保険料の積立部分の運用利回りを決めているが、これが「予定利率」である。

標準利率は、2016年の日本銀行によるマイナス金利政策の導入以後、一気に下がっている。保険料を一括で支払う「一時払い」の保険は、16年7月時点で終身保険が0・25%に、養老・年金保険に至ってはゼロ%と〝金利のない世界〟に突入した。月払いや年払いなど、保険料を均一化して払い続ける「平準払い」の保険は、1%台を保っているが、17年4月から一時払い終身保険と同じ0・25%にまで下落するのだ。この標準利率は生保業界の歴史上、最低水準だ。

契約者から預かった保険料の一部を責任準備金として積み立てて、国債を中心とした有価証券で運用している生保会社だが、マイナス金利で国債の利回りが急落し、十分な責任準備金が積み上がらない事態に陥っているのだ。

特に、契約者からの保険料を運用し、まとまった金額を満期時や解約時に返す「貯蓄性保険(終身保険や年金保険など)」では、販売休止や予定利率の改定などに、生保各社は舵を切っている。予定利率とは前述の通り、標準利率を参考に、各社が独自に設定する運用利回りのこと。予定利率を下げることは、保険料の値上げを意味する。同じ運用収益を上げるためには多くのおカネを必要とするからだ。

そのため、4月以降に、月払いの年金保険や終身保険、学資保険などを軒並み値上げする生命保険会社が続出しており、これにより、2~3月にかけて駆け込み需要が発生しているのだ。

では4月からどのぐらい保険料が値上がりするのか? 生保会社の円建ての貯蓄性保険の中でも返戻率が高く、資産形成商品として人気がある住友生命の定額個人年金「たのしみワンダフル」を例に取ろう。

30歳男性が「65歳払込満了の10年確定年金、基本年金額100万円」の条件で同保険に加入した場合、現在の月払い保険料は1万9370円だが、4月2日以降は2万2660円と月額3000円以上と約17%も値上がりする。年金受取総額1000万円に対して、支払い保険料総額は現在813万5400円だが、改定後は951万7200円となり、返戻率は122・9%から105・0%と大きく下がる。35年間保険料を運用して金利が5%しかつかないのだから、もはや円建ての貯蓄性保険の魅力は小さい。

4月以降、この反動が来るのは必至である。マイナス金利下で生保各社は戦略の見直しを迫られている。

 

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