少額短期保険業者のjustInCase(ジャストインケース)は5月1日から、1泊2日以上の入院で一時金10万円を受け取れる「コロナ助け合い保険(シンプル医療ほけん)」を発売した。商品名の通り、新型コロナウイルス感染症の拡大をきっかけに開発された医療保険で、安価な保険料とシンプルな設計が大きな特徴だ。
万が一、新型コロナに罹患した場合だけでなく、ほかの病気やケガでも1泊2日以上の入院をした場合が保障対象となる。新型コロナの場合は、病院への入院だけでなく、臨時施設(病院と同等とみなせる施設)やホテルなどの宿泊施設、自宅などで療養し、医師の治療を受けている場合も、入院一時金が受け取れる。15~64歳まで加入できる。
発売前日の4月30日にはオンラインでの商品説明会があり、justInCase の畑加寿也代表取締役が商品開発の背景を説明。「新型コロナウイルス感染症で人々の不安が増大する中、『保険会社にできることはないだろうか』と社内で議論し、社員全員が『不安を抱えるすべての人に向けた保険を贈る』という思いで一致団結し、新商品開発に着手した」と話す。
実際、検討開始から発売に至るスピードは速かった。4月1日に社内で検討を開始し、商品設計に着手。監督官庁との折衝もスムーズに終えて、わずか1ヶ月で販売開始にこぎつけた。「(商品コンセプトや約款などの折衝は以前から行っていたこともあり)関東財務局への届け出後、新商品は違和感なく受け入れてもらえた。結果的にはこれまでで発売した保険の中で最速の開発スピードとなった」と畑代表は語る。
一般の医療保険の半額以下の保険料水準
「コロナ助け合い保険」の最大の特徴は、圧倒的に安い保険料にある。20~24歳の男性の月払い保険料は560円、女性は同660円、60~64歳の男性は730円、女性770円と、若年層と高齢層で保険料に大きな差がない。他社の入院一時金を保障する医療保険と比べればその安さは一目瞭然だ。太陽生命が発売するネット専用の「スマ保険」との比較では、20~40歳代ではおおむね半額以下の保険料で、50歳以上になれば、6~7割も安くなる(表参照)。「コロナ助け合い保険」は1年更新で1泊2日以上の入院での保障に対して、スマ保険は10年更新で日帰り入院から保障と、保障内容の充実度ではスマ保険がやや勝るが、保険料の差は歴然だ。
手続きもいたってシンプルで、スマホやPCからWebで申込み手続きは完了する。手続き時にクレジットカード情報の入力は必要だが、健康診断書の提出や本人確認書類の提出は不要だ。保険料はクレジットカード払いとなり、年1回自動更新される。万が一入院した場合の「入院一時金」の請求は、契約者専用の「マイページ」から可能で、病院から発行された診療明細書や領収書をスマホなどで撮影し添付して送信する。
同保険には現場の医師からも賛同のコメントが届く。神奈川県立循環器呼吸器病センター呼吸器内科医長でMedifellow CEOの丹羽崇氏は「未曾有のウイルスに皆が不安を抱える中、少しでも何かに備えたいと考えたとき、保険は一つの選択肢になる。特に在宅勤務ができない方々は感染症リスクだけでなく、経済的なリスクも抱えている。安価な保険料で入院一時金10万円を受け取れることは精神的な支えになると考える」と話し、玲子内科クリニック医長の保科玲子氏は「パンデミックはすべての人にとって初めての体験。病院では多くの医療従事者が命を救うために毎日尽力している。その一人として気力を保つためにも、直接エールを送ることのできるこの保険の意義は大きいと思う」と語った。
justInCaseは今年2月に発売した日本初のP2P保険「わりかん保険」でも、「助け合い」や「相互扶助」など保険の原点に根ざした商品設計をしている。今回の「コロナ助け合い保険」もまさにその思想を受け継いだ商品であり、同保険の収益から必要経費を除いた全額を、日本赤十字社を通して医療機関に寄付するという。
「多くの人にこの保険を届けたいと考えていますが、特に雇用面での不安が大きい非正規雇用の方々の、万が一の際の経済的な支えになればと思っています」(畑代表)。
シンプルで安価な保険を矢継ぎ早に繰り出すjustInCaseの新たな挑戦には大きな注目が集まっている。