ペット保険の創業者、野川亮輔氏(日本ペットオーナーズクラブ社長)語る。なぜ、「ペットあんしんケア制度」を作ったのか。
- 2014/7/30
- 業界最前線
日本初のペット保険創設が新事業の原点
もう20年以上も前の話になりますが、私がペットの保険を世に送り出したいと考えたきっかけは、グローバルに事業展開する外資系損保に勤務していた時、「動物愛護発祥の国である英国で、ペット保険の普及が進んでいる」という業界新聞の記事を偶然目にしたことにあります。
日本は当時、バブル絶頂期でもあり、私自身を含めて多くの家庭で犬や猫をペットとして飼育していました。ところが、人を対象にした保険商品はあるのに、なぜ日本にはペットを対象にした保険が存在しないのか。保険会社に身を置く者として疑問を抱いたことが、のちのペット保険の事業化につながったのです。
外資系損保での仕事をしながら、その後、1年以上にわたって国内のペットを取り巻く環境を独自にリサーチしました。その結果、次のような事情が分かりました。
① ペットの医療には公的な健康保険制度がないため、治療費は全額自己負担となり、時には数百万円もの高額な自己負担が発生すること。
② 日本の臨床獣医師の技術的な力量は、ペット医療の先進国のアメリカに20~30年も遅れていること。
③ ペット保険は、ペットを取り巻く環境を改善する努力をしなければ健全な発展は遂げられないこと。
こうした事情や課題が見つかりましたが、日本でもやり方さえ間違えなければペット保険(当時は共済)を健全に普及させることができるとの確信があり、私は会社を退職し、会員制の日本ペットオーナーズクラブを創業しました。その後、さまざまな関係者の協力の下、日本初の本格的なペット健康保険(商品名:ペット共済制度)を1995年に世に送り出しました。
契約者数は順調に伸び、損害率も安定していたこともあり、2003年には損害保険会社化を目指し、準備会社を設立。2006年4月に保険業法が改正されたことを機に、少額短期保険会社の登録申請を全国に先駆けて行い、その年の11月にペット保険としては日本初の少額短期保険会社(社名:ペット&ファミリー少額短期保険株式会社)として当局より営業許可をいただきました。
私は、その1年半後に代表取締役を辞しましたが、その後次々にペット保険を扱う保険会社(損害保険会社2社、少額短期保険会社7社)が設立されました。この7年間で推定加入頭数80万頭、保険料で推定230億円の規模のマーケットに成長したことは、ペット保険の創業者である私には喜ばしいことですが、競争激化による新たな課題を生み出しています。そのことについてはここでは詳しく触れません。
飼い主が万が一の場合に備える「ペットあんしんケア」制度
さて、私がペット&ファミリー保険会社を辞めてから構想を開始し、このほど事業化に至った日本初の「ペットあんしんケア」制度についてご説明いたします。
本事業は、日本ペットオーナーズクラブの経営理念である「人と動物たちの絆(ヒューマン・アニマル・ボンド)の大切さを理解し合い、ともに健康で心豊かな潤いのある社会の実現に貢献する」に基づいて、主に50歳以上の中高齢者(独身者は年齢問わず)向けの全く新しいペット・ターミナルケア事業であります。
現在、わが国は急速に高齢化社会に向かっており、2025年には65歳以上の高齢者が、全人口の約3割(28.7%)を占めると予想されております。その一方で、家庭内の飼育動物は年々減少傾向にあり、ペットフード協会の調査によれば、今後毎年5%ずつ減少し、同じく2025年には犬の頭数は6000万頭を下回ると予想されております。
このような社会背景とは別に、ペットと生活している高齢者(単身者含む)が今後のことを考え、また、ペットと生活したいと思う中高齢者が自らの余命と動物の寿命を重ね合わせて、自身に万が一のことが起こった際の動物の処遇を案じ、動物の飼育そのものをためらってしまうケースが多く発生しています。このような場合にも安心してペットを飼育していただけるように、この事業を開始することにしたのです。
東京都獣医師会も推薦
当社では本事業を促進するに当たって、公益社団法人東京都獣医師会に諮問致しました。同獣医師会からは、「高齢者がペットを飼育することは心身の健康を維持するという多くのエビデンスも得られている。本事業は、中高齢者が生涯にわたって動物を安心して飼育できるシステムであり、飼育者はもとより、中長期なペット業界の発展のために必要不可欠で喫緊(きっきん)の事業である」と評価していただき、本事業は同獣医師会の推薦事業として同理事会で承認されました。
この理事会決定は東京都獣医師会の長い歴史のなかで民間の企業に対して初めてのことだと聞いており、新しい事業に対しての大きな責任を感じております。
「ペットあんしんケア制度」の概要については以下の記事をお読み下さい。
日本ペットオーナーズクラブ、日本初の「ペットあんしんケア制度」開始
【野川亮輔氏プロフィール】
1969年中央大学卒業、同年AIU保険入社。仙台支店長、東京本社営業推進部次長、事業開発本部営業開発室長など歴任。1993年12月日本ペットオーナーズクラブ設立。1995年10月日本初のペットの健康保険発売。2003年4月(株)アーポック・アニマル・ヘルスケア研究所設立、埼玉・戸田市に動物病院開業。2006年11月国内初のペット保険専門会社、ペット&ファミリー少額短期保険(株)設立、代表取締役に就任。2008年6月同社退任。2014年4月日本ペットオーナーズクラブの新事務所を千代田区に開設、「ペットあんしんケア制度」会員募集開始。