新型コロナウイルス感染症が猛威を奮っている。感染拡大防止を第一に考えて、企業が主催するイベントやセミナーなどは軒並み中止となっている。こうした中、AIG損害保険は予定していた対面での記者向け説明会を変更し、非対面でのオンライン説明会を開催した。メディアを対象としたこうした説明会の開催は保険業界では初めてとみられる。コロナウイルスの終息がまったく見えない中、今後、このような形態でのセミナー、イベント、会見が企業に広がる可能性がある。
AIG損害保険は4月9日12時から、「中小企業向けビジネスの展望と労災上乗せ保険『ハイパー任意労災(業務災害総合保険)の新特約に関するメディア向けオンライン説明会」を開催した。AIG損保からの参加者は代表取締役社長兼CEOのケン・ライリー氏、中小企業セグメントビジネス部門担当兼データ&アナリスク部門担当のビル・ゼン執行役員、傷害医療保険部門担当の片山敦執行役員の3人。進行役は広報部の荒英世氏が務めた。メディア側の参加者は新聞社、雑誌社、保険業界誌所属の記者ら約15人。
全員がパソコンやスマホ、タブレットなどを活用し、自宅や外出先から参加。登壇者となったAIG損保の3人は自宅から画面を通じて、記者らに説明を開始した、
AIG損保の中核に中小企業セグメント
はじめに挨拶したケン・ライリーCEOはWebでの説明会について、「新型コロナウイルスの感染症の拡大防止のため、リスク軽減の意味からオンラインでの開催とさせていただいた」と話した。その上で、同社事業の基本戦略について、「一般的に損保会社ではリスクを個人と法人に分けて対応しているが、当社ではさらに法人を大企業セグメントと中小企業セグメントに分けて、商品設計からリスクコンサルティングサービス、セールス、保険金支払いに至るまで各セグメントごとに対応をしている。これは他社にはない当社の独自性であり、中小企業セグメントはAIG損保の中核にあるセグメントだ」と強調した。
次にビル・ゼン執行役員が、中小企業向けビジネスの概要を以下のように説明した。
「AIG損保は中小企業分野におけるマーケットリーダーだ。世界80以上の国や地域で事業を展開しており、日本の中小企業マーケットが最大の市場規模であることを誇りに思っている。中小企業は日本の雇用の70%以上を創出しており、日本経済を支える屋台骨だ。ただ、中小企業が抱えるリスクは多様で複雑であるにも関わらず、大企業と異なり、中小企業には専任のリスクマネージャーがいない。だからこそ当社では、専業代理店を通じて中小企業のお客様にリスクコンサルティングサービスを提供することに注力してきた」
「保険代理店がリスクコンサルタントの役割を果たすことはピンとこないかもしない。たとえば、プロ代理店が小さな工場を初めて訪問したとする。ほかの保険会社の代理店なら商品の特性や保険料などの相談を始めるが、当社は、経営者から事業運営や財務状況、インフラ、サプライチェーンの話を聞く。その後、その企業が抱えるリスクをマッピングで示して、どのリスクをいかに軽減できるか、またどのリスクを保険会社にリスク移転すべきかを提案する。そして、リスク移転すべきものに対して、カスタムメイドのソリューションを設計する。商品ありきではなく、リスクコンサルティング主導のアプローチが中核的な戦略の一つだ」。
中小企業向け労災保険の新特約・サービスを開発
続いて、4月20日に発売を予定している新特約と、4月1日から開始したサービスの概要が説明された。同社は、中小企業の労災上乗せ保険である「ハイパー任意労災(業務災害総合保険)」の新特約として、「所得補償保険金支払特約」と「雇用慣行賠償責任特約」を新発売する。すでに付帯サービスとして、中小企業向けに弁護士による法律相談ホットラインサービスの提供を開始している。
今回のオンライン説明会はシスコ社のテレビ会議システムを用いて開催された。AIG損保側の関係者は冒頭の4人のほかに、システム担当者らも在宅で円滑な運営をサポートしていたという。同システムは記者からの質問をテキストファイルや音声などで受け付けることも可能で、非常時のイベントやセミナー開催で企業が活用する機会も増えそうだ。