かんぽ生命がセミナーインフォのセミナーでAI事例紹介

 セミナーインフォは4月19日、JA共済ビルカンファレンスホールで「InsurTech の進展と保険業務革新」と題する保険・共済業界向けのセミナーを開催した。かんぽ生命の経営企画部イノベーション推進室の松阪高宏企画役が、「かんぽ生命におけるイノベーションの取り組み〜AIを活用した取り組みを中心として」基調講演した。

かんぽ生命は、1916年に発足以来、101年の歴史がある。2007年の郵政民営化からは今年で11周年目を迎える。総資産や保有契約件数では国内最大の生命保険会社だ。ビジネスモデルは日本郵便の郵便局チャネルが主力の販売網で、売り上げ全体の9割が同チャネル。契約者数は約3000万人で、業界全体の4分の1に当たる年間7兆円の保険金・給付金を支払う

同社は、2016年4月にイノベーション推進室を発足させ、テクノロジー活用などの戦略策定を開始。今年4月にはデジタルサービス推進部に名称変更してデジタル化にいっそう舵を切っている。中でもAI活用には積極的だ。年間250万件の保険金の請求があるが、査定者は2000人弱おり、労働人口が減る中で生産性の向上と効率化が求められていた。これまでは、保険金請求案件をイメージワークフローに載せて、2割は機械的に査定。残り8割は人による判断を行っており、「10年ぐらいのベテランではないと判断できない高度な案件も少なくない」と松阪氏は話す。

同社は、最も難易度が高く熟練の審査担当者による対応が必須の査定業務をAI査定を行えないか検討。特に事実確認を要するものなどで活用できないか考えた。たとえば同じ「がん」でも、診断書の記載方法は医師によっても違う。また、同じ病気であれば入院日数を通算するかの判断や、保険金詐欺なども過去の判例を自動チェックできるようにした。始期前発病や告知義務違反などもAIによる自動査定が可能か検討。査定者が経験したことがない案件については、参考になるような推論を出すなど。〝10年選手〟でしかできない領域でも〝3〜4年選手〟でもできるような体制を整備した。

17年3月から「ワトソン」本格導入

2015年10月にIBMのAI「ワトソン」を導入。実証実験を行った結果、機械学習の精度も90%まで上がったので、2017年3月から本格導入。通算で500万件を学習したという。

ただ課題は「100%の精度が出てくるものではない」ことだという。それでも、AI導入による保険金支払い日数の短縮や支払い業務の能率向上と働き方改革、支払い品質の向上などが期待できるため、今後もより精度を高める努力を継続していくという。

もう一つ、かんぽ生命が取り組んでいるのは、AIによるコールセンター業務支援。具体的には顧客の声への対応だ。これまで、オペレーターの知見や経験に頼っていたところが多く、質の均一化が保てていないのが保険会社の悩みでもある。同社はAIや音声認識システムを活用し、応対内容を把握してピンポイントでFAQを出せないか検討。つまり応答記録のフォローとしても活用できないかと考えた。2017年4月からシステムを導入。画面上にFAQを出して応対品質を均質化、オペレーターのPC画面の左にやり取りをチャットのようにテキストで表示し、該当するFAQを画面の右側に自動表示させるようにした。ただ導入したものの精度を高めている段階であり、実用化さまでにはまだ時間がかかるという。

同社では、今後の展開として、郵便局からの問い合わせ対応のヘルプデスクでの活用や、引き受けや顧客接点、商品開発への適用も考えているという。具体的には、チャットボットなどで代理店への対応の自動化などを昨年から実証実験を行っている。RPA(ロボッティック・プロセス・オートメーション)についても2018年度から導入しており、AIを活用した業務改善に今後も取り組む考えだ。(高見和也)

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