メットライフ生命は4月16日、TKPガーデンシティ竹橋(東京都千代田区)で、代理店を対象に「体制整備サポートセミナー」を開催した。全国8カ所への中継を行い、代理店の経営者ら約700人がセミナーを聴講した。改正保険業法の施行から2年が経過し、代理店は規定やルールを作成したものの、実効性が伴っていないケースが散見される。とくにPDCAサイクルを回すのに苦慮する代理店が多い。こうした中、メットライフ生命は全国代理店連合会と共催で、体制整備対する情報提供を目的として同セミナーを企画した
セミナーの初めに、全国代理店会連合会の鈴木圭介会長があいさつ。「全国の代理店から、体制整備の情報が欲しいとの声に答えて開催した、3つの重点ポイントとして代理店経営者の支援 地域代理店の支援、体制整備の支援があり、特に体制整備は最も重要な経営課題の一つ」と強調した。
続いてメットライフ生命の山口浩一郎取締役代表執行役専務が、「2018年3月期は会社として予算を上回った。代理店の皆様の協力の結果だ」と述べるとともに、「金融庁が代理店に対して直接検査ができるようになった。代理店へのヒアリングや立ち入り検査を全国各地で実施している。従業員は100名を超える大規模代理店でなく、5人未満の小規模代理店も含まれている。昨今は中小代理店に行くことが多い」と語った。その上で、「検査の結果、業務改善命令が出たり、登録の取り消しもありえる。社内規則の整備や個人情報管理、意向確認、社内研修体制など幅広く確認されている。課題はどうやって決めているのか? 直近何をしたのか? きっかけは何か? 対象は誰に実施したか?など細かいところまで聞かれている」と実態を語った。
金融庁は2017年2月に好取組事例を公表している。たとえば、社内規則などの策定整備に当たって、既存の社内規則と保険会社から提供された規定を統合し、分かり易い用語に改定して顧客に対して説明を行えるようにした事例が紹介されている。ただ保険会社から提供されたものを、提供するだけでは不十分でカスタマイズする必要がある。「主体性を持ってPDCAサイクルを回すことが大切」と山口氏は語った。メットライフ生命では、体制整備は代理店の重要な課題と位置付け、昨年10月から全国地区統括部に24名の募集管理担当者を設置している。
講演の第一部として、のぞみ総合法律事務所の弁護士・公認不正検査士の吉田佳公氏が「中小規模代理店における態勢整備のあり方 〜最近の金融モニタリング事例を踏まえて〜」と題して登壇。最近の金融当局の動向や、金融庁・財務局による保険代理店モニタリングの主な着眼点、中小規模代理店における態勢整備の在り方を説明した。
19年4月から検査マニュアルを廃止
まず、最近の金融当局の動向として「ミニマム・スタンダート」から「ベスト・プラクティス」への変化が起きていると述べ、最低基準(ミニマム・スタンダード)が形式的に守られているかではなく、実質的に良質な金融サービスの提供やリスク管理などができているか(ベスト・プラクティス)を求める方針に変化していることを強調した。その具体例として金融庁は2019年4月以降をめどに数百ページにも及ぶ「検査マニュアル」を廃止することを明かし、「金融機関が対応すべき項目だけをチェックリストとして示し、それに該当してるかどうかを機械的かつ網羅的に確認するルールベースの検査・監督ではなく、金融行政の目標を踏まえた考え方(プリンシプル)を示したうえで、、より良いプラクティスの実現を目指した議論を行う・・・・・・問題を形式的にチェックするのではなく、金融機関などのガバナンスやカルチャーを含めた根本原因に遡って分析し、その問題の本質的な解消のために必要な対応を行っていく」方針を説明した。
続けて、金融庁・財務局による保険代理店モニタリングの主な着眼点を説明。特に最近は「経営理念・経営ビジョンからの追及を重視している」ことを強調した。たとえば、「経営理念・経営ビジョンから見ると○○をすべきと考えられるが、どうか?なぜ行わないのか?」「経営理念・経営ビジョンの現場への浸透をどのように行っているのか?」「経営理念・経営ビジョンを社外にどのように周知しているのか?」などを追及されるケースがあるとした。
また、インセンティブ報酬などに対する金融庁の問題意識として、代理店が顧客の利益にかかわらず、保険会社から支払われる手数料の高い商品を推奨する場合など、「利益相反」に着目していることを指摘した。
自主点検の実効性の確保が大切に
実際に、2017年11月以降に金融庁が検査に入った代理店の実例を説明。コンプライアンス点検(自主点検)の実効性について確認されるケースとして、「社内規則の順守状況について、誰がどのように確認し、改善につなげているか、具体的内容及び工夫している点を記載してください。また、改善につながった事例があれば記載してください」などの項目があったという。
実効性がある自主点検のやり方としては、単なる募集人の自己チェックや募集人へのヒアリングのみで終わらせないことが重要で、帳票の現物資料の検証、たとえば意向把握帳票や顧客対応履歴の内容を検証する必要があると解説した。
自主点検はPDCAのC(チェック)、A(アクション)に相当し、それを適切に行うためには、前提として業務状況の記録化が大切で、きちんと現場で業務記録を残す重要性を強調した。(高見和也)