損保ジャパン・日本興亜損保、「インドネシアおよび周辺諸国における企業リスク」でセミナー

中期有望成長国としてインドネシアなど

ASEAN諸国に熱い視線

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA中期的に大きな成長が見込める国として、多くの企業がインドネシアに熱い視線を注いでいる。しかしインドネシアに進出するには、多くのリスクが伴うことも事実だ。NKSJグループの中核会社であり、2014年9月に合併を予定している損保ジャパン(取締役社長:櫻田謙悟氏)と日本興亜損保(取締役社長:二宮雅也氏)は、「インドネシアおよび周辺諸国における企業リスク――企業合併・買収(M&A)、法令、贈収賄の最新情報――」と題したセミナーを5月13日、損保ジャパン本社ビルで開催した。インドネシアなどASEANへの進出を検討中の企業の経営者やリスクマネジメント・法務・海外企画部門などの責任者ら約100名が出席し、2人の講師によるセミナーに熱心に耳を傾けた。

法律・文化の異なる国の綿密な調査が必須

 

ラジャ・タン法律事務所 津田雄己弁護士

ラジャ・タン法律事務所 津田雄己弁護士

セミナーではまず、東南アジア最大級の法律事務所であり国際的なM&A案件を多数手掛けるラジャ・タン法律事務所に所属し、インドネシア・オフィス(ジャカルタ)で執務に当たっている弁護士、津田雄己氏が登壇。「インドネシアにおけるM&Aおよび贈収賄をめぐるリスクと対応」をテーマに講演した。
津田氏ははじめに「法律は国によって大きく異なるため、日本での常識が通用しない場合も多々ある。加えて、外国企業ゆえの制約も多い。また、ASEANへの進出方法には、日本からの直接販売、販売代理店の選任、駐在員事務所や支店の設置、子会社の設立、M&Aなどさまざまあるが、それぞれ活動範囲やコストなどが異なる。計画途中で大幅な投資計画の見直しを迫られることのないように、進出に当たっては、現地でどのような事業を展開したいのかを明確にした上で、十分な調査を行うことが不可欠だ」と強調した。
実際、M&Aに至る過程で行うデューディリジェンス(リスクを的確に把握するために行う多面的な調査)で深刻な問題が浮上することも多いという。その悩ましい問題のひとつが、贈収賄。インドネシアでは贈収賄によって入札や税務、裁判などが有利に進められているケースが多く、過去にはこれが原因となって日本人経営者が実刑判決を受けた例もある。従業員にコンプライアンスの徹底をどのように図るかが、インドネシア進出企業の一つの大きな課題のようだ。

 インドネシアは中期的有望国として中国を抜いて1位

2人目の講師として、損保ジャパン日本興亜リスクマネジメント リスクコンサルティング事業本部 ERM部の横山歩氏が登壇。「インドネシアおよび周辺諸国のリスクマネジメント――リスクの最新情報と事例に見るリスクマネジメントの取り組み――」として講演した。
横山氏はまず、今なぜ、多くの日本企業がインドネシアを注目しているのかについて、3つの調査結果を紹介。国際協力銀行が1992年から継続して実施している「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査」の「中期的有望事業展開先国・地域」の項で、それまでトップを維持し続けていた中国が2013年の調査結果では4位に転落。代わって1位となったのがインドネシアだった。その理由として挙げられたトップ3は「現地マーケットの今後の成長性」「安価な労働力」「現地マーケットの現状規模」。逆に課題として挙げられたのは、「労働コストの上昇」「管理職クラスの人材確保が困難」「労務問題」など。
また、中小企業庁が「2014年中小企業白書」を作成するために行った「中小企業の海外展開の実態調査にかかるアンケート調査」で、直接投資先として最も重視する国・地域のトップは、生産機能、販売機能ともに中国だったものの、その比率は前回調査から大きくダウン。逆に前回調査から比率を上げているのは、タイ、ベトナム、そしてインドネシアといったASEAN諸国だった。
加えて、外務省が行った「ASEAN7ヶ国における対日世論調査」(2014年3月)の結果を見ると、インドネシアの一般市民の47%が「最も信頼できる国」として日本を選んでいる。このような点から進出先としてインドネシアが「中期的」な有望国として注目されているのだが、「長期的」な観点からは依然として中国、インドが重要視されていることを、横山氏は合わせて指摘した。

リスク回避の特効薬はない、PDCAを繰り返して基本の徹底を

 

損保ジャパン日本興亜リスクマネジメント 横山歩氏

損保ジャパン日本興亜リスクマネジメント 横山歩氏

続いて横山氏はインドネシア進出にかかわるリスクについて解説。リスクの一つに災害があり、洪水については最近、首都ジャカルタでも発生頻度が高まっているという。地震については、現地ではあまりリスクととらえられていないために建築物の耐震化への対応が遅れており、震度4程度の地震が起きても大災害となる恐れがある。
さらに感染症については鳥インフルエンザのリスクが高く、ほかにもデング熱やアメーバ赤痢への対応が求められるという。 政治・経済・社会リスクとしては、テロの危険がある。一般のホテルやレストランがターゲットとなり、日本人も巻き込まれたことは記憶に新しい。人事・労務リスクとしては、現状、日本企業にとって最も大きな魅力のひとつである「安価な労働力」が高騰していることが挙げられる。今後も高騰は続くと思われるが、これが果たしてどこまで上がるのかということが、進出を検討する日本企業の大きな関心事となっている。
また、インドネシアの労働争議は、常に「労働者寄り」で進められがちで、賃上げや福利厚生に絡むデモやストライキも頻発している。 生産・販売リスクについては、贈収賄と情報漏えいがある。情報漏えいに関しては、情報セキュリティ対策の遅れと、企業への帰属意識が薄いために転職・退職者による意図的な漏えいが問題になっているという。
贈収賄や情報漏えいを防ぐにはコンプライアンスの徹底が必要だが、これには特効薬はないと横山氏は言う。リスク評価、ガイドラインの作成や研修の実施、取組内容の評価、実施内容の評価といったPDCAを地道に回していくこと、基本的なところから、繰り返し徹底していくことによって、効果が期待できると話す。(坂本潤子)

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