アクサ生命、契約者の「健康な時」に新サービス提供へ
- 2014/5/9
- 業界最前線
郵送検査キットで生活習慣病予防
アクサ生命は7月から、保険契約期間中の「健康な時」に提供するサービスを充実させる。糖尿病など生活習慣病の検査が自宅でも可能な「郵送検査キット」を契約者向けに安価で提供し、病気の早期発見・治療に役立ててもらう。5月9日、東京・白金の同社本社で開催したマスコミ・FP向けのセミナーで、サービスを開始することを明らかにした。
従来、保険本来のサービスは万が一の病気やケガ、死亡時に保障を提供することで、顧客が健康な時には、住所変更などの保全手続やセールス時を除いて、顧客と保険会社では接点がほとんど生まれないのが通例だ。アクサ生命は、契約期間中で最も長期にわたる「健康な時」のサポートが今後の差別化要素になると考えて、生活習慣病に罹患していないかなど自分の健康状態を把握することが可能なサービスを開始する。
同セミナーで概要を説明した執行役員メディカル&プロテクション事業本部長の松下健一郎氏は「お客様が保険にご加入いただいている期間内では、健康である期間の方がむしろ長い。その一番長い期間に保険会社は何ができるかを考えたときに、現在はセールス以外にあまり接点がないのが実情だ。お客様の満足度を高める努力をしているとは言い難い。セールス以外でサポートをするべきと考えた」と語る。
サービスの中身は、「優待サービス 郵送検査キットの提供」としか発表されていないが、セミナーでの説明によると、この検査キットを用いて自分の指先などから血液を採取して、所定の検査受付窓口に郵送すると、糖尿病など生活習慣病に関する血液中の成分などの数値を調べてもらえる検査システムのようだ。自分自身の生活習慣病に関わる数値を把握することで、以後の生活習慣の改善に役立ててもらう狙いがある。ただし契約者向けの無料サービスではない。松下氏によると、「ネット通販サイトの『アマゾン.com』で購入するよりは安い水準で提供する予定です」と言う。
主婦の7割が検診機会ない
同社がこのサービスを開始する大きな理由の一つに、主婦や自営業者、中小企業のオーナー・従業員の健康診断受診率の低さがある。大企業の正社員であれば福利厚生の一環として社内で健康診断を受けられるケースも多いが、それ以外の人たちは自助努力で健康維持に努めなくてはならない。同社によると特に主婦層の検診受診率は低く、「約7割の主婦は定期的に検診を受けられる環境にない」(松下氏)という。
こうした健康診断の受診率の低い契約者に対して、健康状態を把握できる新サービスを提供することで、「保険に加入しているお客さまの健康時の〝体験価値〟を高めていきたい」とも執行役員テクニカル&プライシング本部長の野島崇氏は説明する。
保険の概念変える可能性も
これまで「病気やケガ、死亡など万が一の場合への備え」というのが、保険および保険会社の重要な役割だったが、健康な時から疾病予防を支援するサービスの推進は、保険の概念や保険会社の役割を拡大させる可能性を秘めている。また、こうした健康増進サービスが広がると、高騰する国民医療費の抑制や、保険会社が支払う給付金・死亡保険金の削減にまで、将来的にはつながる可能性がある。(高見和也)