大手国内生保の「保険ショップ」展開が多様化

4社4様の運営方針で新規顧客を開拓

日本生命、第一生命、住友生命、明治安田生命などの大手国内生保が、顧客が直接訪問して保険の相談ができる「来店型の保険ショップ」への取り組みに力を入れている。子会社を通じて保険ショップを運営している会社や、自社の支社窓口を来店型の店舗に衣替えしている会社など、戦略や方針などはさまざまだ。住友生命のように、保険ショップを成長戦略の重要な柱の一つに位置付ける会社も出てきた。生保各社の取り組みを追う。

大手生保の保険ショップの現状(2014年4月時点の比較表)

住友生命は、国内生保会社の中で来店型の保険ショップ展開に最も力を入れている。子会社のいずみライフデザイナーズが来店型の保険ショップ「ほけん百花」を全国で約70店舗運営している。2013年10月に「ほけん百花」と「保険の森」の2ブランドを集約させた。

4月中旬に発表された同社の2014年4月からの新3カ年計画「スミセイ中期経営計画2016~ブランドの進化と新たな成長路線を確立する3カ年計画~」では「成長戦略」を中計の柱に位置付けており、ライフデザイナー(営業職員)および金融機関代理店・保険ショップを中心とした、マルチチャネル化の推進を打ち出している。

最大の狙いは、「住友生命グループとして新規顧客の拡大」(同社)だ。住友生命の商品を中心に販売するライフデザイナーに加えて、複数の保険会社の商品を顧客ニーズに合わせて提供する乗合型の保険ショップ「ほけん百花」を運営することで、幅広い顧客層を獲得しようという目論見だ。住友生命グループには医療保険など第三分野商品を中心に扱うメディケア生命があり、乗合型の保険ショップがメーンの販売チャネルとなっている。

 ショッピングセンター内への出店も活発化

 日本生命はすでに1987年に保険ショップの第一号店「ニッセイ・ライフプラザ」を東京・新宿に開設。解約防止など、保有契約の防衛を最大の目的として、来店型の拠点を構えた。その後、拠点を徐々に拡大していき、2014年4月時点で全国99ショップに達している。ショップでは、保険契約に関する各種手続や相談、無料セミナーの開催、ライフイベント関連情報の発信など、「既契約者のアフターサービス・新規顧客の獲得としての役割を担う」(同社)。

2013年12月にはイオンモール幕張新都心に、ニッセイ・ライフプラザが持つ窓口機能を拡充し、FP(ファイナンシャル・プランナー)資格を持つ窓口スタッフが顧客の悩みを一緒に解決する新しいコンセプトの「くらしと保険の相談でデスク」を出店している。

第一生命は保険ショップの一号店を2007年3月に東京・王子に開設。ショップ開設の背景には①夫婦共働きなどによる在宅率の低下、②マンションのオートロックや個人情報保護法施行による個人・法人へのコンタクトの困難さ―など、顧客のライフスタイルの変化などによって、営業職員が顧客に直接アプローチできる機会が減る傾向にあることが挙げられる。

もともと「既契約者フォローの強化」を狙いとして保険ショップをスタートさせたが、当社の想定よりも第一生命の既契約者ではない新規契約者が多く訪問することが分かり、2010年4月の株式会社化を機に、保険ショップの全国展開を図る。2014年4月時点の店舗数は全国82シップに上り、支社窓口を移設または改装した店舗が67店舗、そのほか、イオンの金融モールなどショッピングセンター内に新設した店舗が多いことが特徴的だ。

 

明治安田生命の「保険がわかるデスク丸の内店」

明治安田生命の「保険がわかるデスク丸の内店」

明治安田生命は大手生保の中でも唯一、一社専属と乗合型と2タイプのショップを運営している。2009年5月に直営(一社専属)の保険ショップ「保険がわかるデスク」と、乗合型の「ほけんポート」を東京・新宿の同社ビル内にオープンさせた。「既契約者の新規保険ニーズに対応」する保険がわかるデスクは、現在10店舗、「新規顧客の獲得」を目指すほけんポートは、現在4店舗となっている。

同社では、2010年10月に保険がわかるデスクの2号店として、保険相談コーナーとフリースペースを併設した〝カフェタイプ〟の保険ショップ(=写真)を東京・丸の内の明治安田生命本社ビルの1階に開設させるなど、意欲的な取り組みを展開している。

誰でも自由に訪れて休憩したり食事をしたりできるフリースペースを設けたショップとしては、日本生命が東京・丸の内のホテル・オフィスの複合施設「丸の内オアゾ(OAZO)」に2012年2月にオープンした「みらいフォレスト」なども来店客の多さで良く知られている。

 グループ戦略として保険ショップを重視

  インターネットの普及や民間事業者が運営する乗合型の保険ショップが全国規模で広がりを見せる中、顧客が積極的に自ら情報収集し、保険ショップに訪れて相談する場面が増えている。一社専属の営業職員チャネルを販売チャネルの中心に据えている国内の生保会社にとってもこの環境変化は無視できない。2014年度上期中には、第一生命が損保ジャパンDIY生命を子会社化し、新会社を通じて保険ショップや銀行窓販向けの商品・サービスを提供する予定とするなど、グループ戦略として保険ショップなどの新たなチャネルを重視する動きも広がっている。大手生保各社の保険ショップへの取り組みは一層活発になることは間違いない。

(高見 和也)

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